爪の形
母が亡くなって早いもので20年近く経ちました。
父は昔の人間なので、母と人前でベタベタするようなことはありませんでしたが、
それでもとても愛していたように思います。
母の思い出を語る時、決まって「お母さんは天使のような人だった」と言いました。
そして必ずこう付け加えました。
父 「そんなお母さんにもひとつだけ欠点があったんだ・・・」 僕 「何?」 父 「それは・・・爪の形が悪かったこと・・・可哀相なくらいだったなぁ・・・」
母の入院中、よく手のひらをマッサージしていましたが、爪の形なんて注意してみたことはありませんでした。 父 「そして、子供たちに見事に遺伝したんだ・・・」 僕 「ふーん・・・」
以来、自分の爪を見ると母親を思い出すようになりました。 その母の思い出話も聞けなくなって、12年が経ちます。