ハワイと父(2)
6/22の続きです。
父はもともと心臓に持病があり、糖尿病も併発していて毎日インシュリンの助けが必要でした。 今回の入院は命に別状はないものの楽観できる状態ではありませんでした。 僕たちは迷いましたが半年後の5月にビーチタワーを押さえました。 本人に何か目標を持ってもらいたいという思いでした。
翌年の3月には介護が必要なものの週末に外泊の許可がもらえるまでになりました。 とはいってもハワイまであと2ヶ月弱、この状態で海外旅行ができるのか、僕たちは迷っていました。
しかし、4月7日の朝、事態は急変することになります。 朝6時の検温の時、父は看護婦さんと言葉を交わしたそうです。 そして、7時の朝食の時には息がありませんでした。 後に看護婦さんが父と交わした言葉を教えてくれました。
「ロンドンの宝くじが2億円当たったんだ」
父の最期の言葉です・・・
父さん、なんて言葉を残してくれたんだ(笑) そんなわけはないと思いながら、探しに探しましたよ。 勿論ありませんでしたけど・・・
さて、5月のハワイですが、僕たちは迷うことなく出発しました、父の写真を持って。 ビーチタワーの部屋に入るとまず父の写真をテーブルの上に飾り、 あとはいつものように買出しに行ったり、アラモアナSCを流したり、夕飯をとり、 DFSをのぞいた後、カラカウア通りをブラブラしながら10時頃部屋に戻りました。
その直後、
トントン!
ノックの音です。 まだ部屋に入ったばかりでドアの近くにいたので「はい」と僕は返事をし、 すぐにドアを開けました。
誰もいませんでした。
ビーチタワーに泊ったことのある方はわかると思いますが、1フロアーに4部屋しかなく、 そのためエレベーターホールも狭く、フロアーのほぼ全て見渡すことができます。
確かに誰もいませんでした。
妻と顔を見合いながら、二人同時に父の写真に視線を移していました。
妻 「来たんだね」 僕 「うん」
霊の存在を信じますかと聞かれれば、信じませんと答える自分ですが、 この時はごく自然に来たんだなと思いましたし、また来てほしかったんだと思います。 不思議な感覚でした。
そしてその10ヵ月後、年齢的にも半分諦めていた一粒種が誕生する事になります。