ハワイと父(1)
僕の結婚式に同行してハワイに一発KOされた父は、帰国するなり
父 「次はいつ行く?」 僕 「帰ってきたばかりでまだ予定がたてられないよ」 父 「10月くらいはどう?」 僕 「まだちょっとわかんないな」 父 「そうか・・・」 僕 「来年、行こうよ」 父 「そうか・・・」
1996年5月の終わりの話です。 その後暫くこの話は忘れていたのですが、ある夏の日、電話がありました。
父 「ホテルと航空券を3人分手配してほしい」 僕 「えっ!だから僕たちは・・・」 父 「いや、友人の親子に声をかけたら行くというので10月に3人で行ってくる」
聞けばその親子は初めてのハワイ、そして父は2度目。 ツアーじゃなく、個人手配で行きたいと言います。
僕 「大丈夫なの?」 父 「なんとかなるさ」
旅行はそれなりに楽しかったようですが、 やはり、70近い父は緊張と責任感で少し疲れたようです。 しかし、ますますハワイに惹かれた様子で、どこで調べたのでしょうか、 作ってきたBUS PASSを誇らしげに僕たちに見せ、
父 「写真を撮るときにさ、日本だったら笑ったら怒られるだろ」 僕 「そうだね」 父 「でもさ、向こうの係りの人はさ、もっと笑えって言うんだよ」 僕 「へぇ」 父 「More Smile!って何回も言うんだよ」 僕 「そう」 父 「なんかいいよな」
BUS PASSには病気がちで普段あまり笑わなくなっていた父の精一杯の笑顔が映っていました。
翌年、一緒に行く約束をして僕たちは別れました。
父が倒れたのは、それからまもなくのことです。
すみません・・・続きます。